2009年第1四半期、足元のポイント
2009年1-3月期のICT経済は、期後半にかけて、生産や設備投資(官公需)、輸出の減少に底打ち感が出始めた。中国などのアジアを中心とした外需の回復や国内の追加経済対策による景気押し上げ効果が徐々に顕在化した格好だ。設備投資(民需)やサービス部門は依然として低迷しているなど、不安定要因も残されているが、今後、ICT経済が日本経済の回復に向けての起爆剤となれるかが注目される。
今回のポイント
- ICT関連生産の下げ幅は輸出の下げ幅が縮小したことから底打ちしている。一方、設備投資の先行指標となる機械受注は半導体製造装置を中心に依然低迷している。
- ICT関連消費は増加を維持している。携帯電話の割引プラン導入率上昇によるARPUの低下が影響し、増加幅が縮小していたが、足元では持ち直しつつある。
- ICT関連サービスは生産よりも遅れて、足もとで減少幅が拡大している。これは企業の設備投資の低迷を背景とした新規受注ソフトウェアの減少が背景にある。製造業の売上高減少に伴うコスト削減圧力により、ソフトウェア開発の海外アウトソーシングが拡大する可能性がある。
- ICT関連官公需の設備投資が2009年3、4月と増加してきており、追加経済対策により今後も好調となることが想定される。
- 4月のICT関連サービスの下げ幅が縮小した一方で、5月はICT関連輸出の下げ幅が若干拡大。トレンドが不明確であり、本格回復につながるのか今後の動向が注目される。
2009年第1四半期および足元の動向
図表は詳細版に掲載しております。(press20090630.pdf)
(ICT関連生産)
- ICT関連生産は2桁の大幅減が2四半期連続となり(前年同期比マイナス44.0%)、全品目で前年比減少となった。ICT関連生産が大幅に減少し、世界経済の急激な景気後退の影響を顕著に表している。
- 2009年3月以降、ICT経済の生産面では、在庫調整の進展により、生産の下げ止まり傾向が見えてきている。(図表1)。
(ICT関連在庫)
- そのICT関連在庫は、2008年第4四半期で増加幅が急拡大していたが、集積回路、電子部品、民生用電子機械などの在庫調整が急速に進展したこともあり、2009年第2四半期は14四半期ぶりに前年比で減少(同3.9%⇒マイナス20.7%)した(図表2)。大幅な減産の効果と国内外の経済対策によるデジタル家電需要の増加による電子部品の出荷の持ち直しが影響した。
- 2009年6月に入り、鉱工業生産全体の減少幅は在庫の減少幅を上回って在庫調整局面にあるが、ICT生産の減少幅(-21.6%)はICT 在庫の減少幅(-22.4%)を下回っており、45度線を越え、回復局面に入っている。(図表3)。
(ICT関連サービス)
- ICT関連サービスは3四半期連続で減少した(同2.8%)。減少幅拡大の背景にはソフトウェア系の減少がある。受注ソフトウェアの減少幅の急拡大が最大の減少要因となった。さらにソフトウェアプロダクトの減少幅も拡大した(図表4)。景気減速により企業の売上高が減少したことによって、企業が情報化投資を削減したことが背景にある。
- 4月単月では減少幅が縮小しており、若干の改善の兆しが見られる。
(ICT関連消費)
- ICT関連消費は、増加を維持したものの(同0.9%)、その増加幅は縮小傾向となっている。(図表1)。
- これまで最大の増加要因であった移動電話通信料において割引プラン導入率上昇によりARPUが低下したことが影響している。また、インターネット接続料は価格低下圧力の煽りを受け、9四半期ぶりに増加幅が2桁を割り込んだ。
- そのような中で期後半から4月にかけては持ち直してきている。
(ICT関連設備投資)
- 民需は、3四半期連続で減少(同マイナス23.3%)したことに加え、減少幅も拡大した。最大の要因は半導体製造装置の減少幅の拡大である。この傾向は足元でも変わらない。
- 官公需は経済対策の効果が一部に顕在化してきており、単月でみると2009年3、4月は増加に転じた。
(ICT関連輸出入)
- 減少幅が拡大していたICT関連輸出入は2009年3月以降は縮小している(輸出は同マイナス28.8%、輸入は同マイナス25.2%、図表1)。特にICT関連輸出は半導体など電子部品、電算機類など全品目で減少幅が縮小しており、全輸出の持ち直しに比べ急速なペースで回復している(図表5)。背景には中国国内の内需刺激策(家電下郷(かきょう))によるデジタル家電関連需要の増加による中国向け電子部品の輸出の持ち直しがある。
まとめと今後の展望
- ICT関連生産は、在庫調整に伴い下げ止まりから反転傾向にある。今後、生産活動の本格回復につながるかが注目される。
- ICT関連生産指数の絶対水準は極めて低く(2009年第1四半期の水準はITバブル崩壊直後の最低水準並み)、サービス、設備投資、消費は盛り上がっていない。先行指標となる半導体製造装置の機械受注の大幅減少が続いていることや、これまで好調であったICT関連サービスの低迷、消費の弱含みが懸念される。
- ICT関連輸出の回復については、海外の経済対策、特に中国の内需刺激策により電子部品の生産や輸出に一部改善の兆しがある。
- 今後は国内の追加経済対策の効果が、エコポイント制度によるデジタル家電(最終製品)や電子部品など関連部品需要や、スクール・ニューディールによる官公需のパソコン需要増加などの生産面で期待できる。ただし、消費を中心とした需要の喚起が一時的なものに留まるのか、あるいは持続的な回復につながるものなのかについては、今後の動向を注視する必要がある。
- 企業の設備投資は売上高の減少に伴うコスト削減圧力により低迷しており、ソフトウェア受注を中心に新規需要は見込みにくい。今後しばらくはコスト削減圧力が続くことが想定され、ソフトウェア開発のオフショア・アウトソーシングの進展によるSI業界の雇用機会減少なども懸念される。
- 賞与の減少など家計所得がさらに悪化する中で、巣籠り消費などコスト節約志向から利用が伸びてきたICT関連財、サービスへの消費が今後も堅調に推移し続けられるのか注目される。
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