2009年11月20日
(株)情報通信総合研究所

ICT 生産、IT ブーム期ピークに迫る水準まで回復
−過去の上昇トレンドをふまえれば、一層の上昇余地あり−

 (株)情報通信総合研究所(本社:東京都中央区、代表取締役社長:平田正之)は、情報通信(以下、ICT)産業が日本経済に与える影響を把握するために、九州大学篠崎彰彦教授監修のもと作成した「ICT 関連経済指標を用いた分析を「InfoCom ICT 経済報告」と題して四半期ごとに公表しております。7-9 月期の実質GDP は前期比1.2%増、年率換算4.8%増と2 四半期連続のプラス成長となる中で、2009 年7-9 月期のICT 経済の状況がまとまりました。

 なお12 月上旬には詳細データとともに同経済報告を弊社Web サイト上で公開しますので、合わせてご利用ください(http://www.icr.co.jp/ICT/)。

図表入りの発表資料
A4縦・本文9頁・約536KB
press20091120.pdf

2009 年第3 四半期、足元のポイント

 2009 年7-9 月期のICT 生産は、輸出の持続的回復、在庫調整の急速な進展により、2000 年のIT ブーム期ピークに迫る水準にまで回復した。中国を中心とした輸出の持続的回復、エコポイント制度による液晶テレビ需要の増加が奏功した。加えて、回復するか懸念されていた設備投資(民需)は半導体製造装置の減少幅が縮小したことにより底打ちした。

 過去の上昇トレンドからみて生産は今後一層の上昇が期待され、停滞気味の国内生産活動の中でICT 経済の存在感が際立っている。一方、ICT サービス活動はサービス全般と同様に低調であり、ICT 経済全体が本格成長に向かうのかが今後の注目点である。

今回のポイント

  1. ICT 関連在庫調整が進展し、ICT 経済は回復局面入り(生産は前年同期比マイナス17.5%、在庫は同マイナス22.0%)。
  2. 鉱工業生産が80 年代後半の水準にとどまる中で、ICT 関連生産は2000 年のIT ブーム期ピークに迫る水準まで回復。
  3. 2009 年4-6 月期に下げ止まったICT 関連サービスは再び減少幅が拡大。
  4. 回復するかどうかが懸念されていた設備投資の先行指標となる機械受注は、半導体製造装置を中心に減少幅が縮小。
  5. ICT 関連消費は移動電話通信料とインターネット接続料を中心に増加を維持。
  6. ICT 経済は、過去の上昇トレンドからみて生産が一層回復していくとみられる。今後の注目点は、この動きが本格成長につながるのか、サービスも下げ止まり回復基調となるのかという点である。

2009 年第3 四半期の動向

 図表は詳細版に掲載しております。press20091120.pdf

(ICT 関連生産)

  • ICT 関連生産は5 四半期連続で減少したものの、減少幅が2009 年3 月以降縮小しており(7-9 月期は前期比12.2 ポイント改善し、前年同期比マイナス17.5%、図表1)、全12 品目中1 品目(その他の電気機械)で前年比増となった。
  • 鉱工業生産が80 年代後半の水準にとどまる中で、ICT 関連生産は2000 年のIT ブーム期ピークに迫る水準まで回復している(図表2)。
  • 内需刺激策であるエコポイント制度により、民生用電子機械の中で液晶テレビの生産は前年を上回っている(図表3)。

(ICT関連在庫)

  • ICT 関連在庫は2009 年7-9 月期に入り、鉱工業生産全体に先行して、在庫循環図の45 度線を越え回復局面入りした(図表4)。

(ICT関連サービス)

  • ICT 関連サービスは3 四半期連続で減少した。2009 年第4-6 月期に減少幅が縮小したが、2009 年7-9 月期は、再び減少幅が拡大した(前期比1.9 ポイント悪化し、前年同期比マイナス2.7%、図表1および図表5)。この背景には新規受注ソフトウェアの減少幅の拡大がある。これは、(1)金融機関の特需(銀行の合併によるシステム特需や保険業の基幹システム全体刷新等)の反動減と、(2)企業収益の低下による設備投資全般の低迷が影響している。

(ICT関連消費)

  • ICT 関連消費は11 四半期連続で増加を維持し(前年同期比1.9%、図表1)、移動電話通信料とインターネット接続料が増加に寄与した。

(ICT関連設備投資)

  • 民需は5 四半期連続で減少したものの、減少幅は縮小した(前期比5.6 ポイント改善し、前年同期比マイナス17.7%、図表1)。半導体製造装置の減少幅が縮小したことが背景にある。一方、電子計算機の減少幅は拡大している。景気悪化に伴うコスト削減圧力と投資対効果を求める企業行動が設備投資全般の低迷に影響している。
  • 官公需は増減を繰り返しており、今期は減少となった。

(ICT関連輸出入)

  • ICT 関連輸出入は2009 年3 月以降で減少幅が縮小しているものの、回復ペースは鈍化している(輸出は前期比1.8 ポイント改善し、前年同期比マイナス27.0%、輸入は前期比1.1 ポイント改善し、前年同期比マイナス24.1%、図表1)。引き続き中国の内需刺激策(農村部向け家電普及策「家電下郷」、都市部向け家電買い替え促進策「以旧換新」)により、液晶部品をはじめとする半導体等電子部品は減少幅が縮小しているものの、電算機類の部分品と通信機は減少幅が拡大している。

まとめと今後の展望

  • 過去の上昇トレンド(前回の景気拡大が始まった時点2002 年第1 四半期までのトレンド)からみると、ICT 関連生産は今後一層上昇基調となることが期待され(図表2)、この回復が本格成長につながるのか、今後のICT 経済の注目点である。

  • 一方、ICT 関連サービスは、受注ソフトウェアにおける特需の反動減の影響や景気後退の低迷によるソフトウェア投資の低迷が影響し、減少   幅が拡大している。ICT 関連サービスはICT 以外のサービスに比べ、下げ幅が軽微で推移していたものの、7-9 月期は異なる様相を呈している。

  • 家計所得の減少や5%を超える失業率など家計部門の厳しさが今後も続き、当面消費全体が弱含みとなる可能性が指摘されている中で、ICT 関連消費については移動電話通信料とインターネット接続料が底堅い動きを今後も示すと見られる。

  • ICT 関連設備投資は半導体製造装置の持ち直しが好材料であるが、電子計算機、通信機での低迷が続いており、品目により回復に差がでてきている。ICT 経済が回復および本格成長の軌道に戻るためには、今後、設備投資面での動向が鍵を握る。

  • ICT 関連輸出の回復は、海外の在庫調整の急速な進展と、中国の内需刺激策によるデジタル家電需要の増加による電子部品需要の増加が背景にある。この動きが続く間に、欧米の景気が持ち直すことが期待される。

  • 国内の内需刺激策は、エコポイント制度によるデジタル家電(最終製品)や電子部品など関連部品需要で効果が引き続き期待できる。ただし、需要の先食い的な側面が懸念される。

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株式会社情報通信総合研究所マーケティング・ソリューション研究グループ
経済分析チーム:主席研究員野口正人、主任研究員手嶋彩子、研究員山本悠介、
研究員山崎将太、研究員久保田茂裕
監修九州大学大学院経済学研究院教授篠崎彰彦

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